市場と共進化

とあるアクション小説を読んでいたら、量子力学とInteligent Design(知的創造っていうのかな?)の話が出てきた。 振り返って自分の研究テーマである経済学を考えると、経済学ってあまり進化ってことを考えない学問だ。 一部に、進化経済学というものがあったり、イノベーションを考えることはあるが、亜流というかなんというか、メインストリームではない。 でも、やっぱり市場やその構成員である生産者も消費者も進化すると思う。 たとえば、インターネットの発展で消費者が持っている情報量は爆発的に増えたし、口コミによる宣伝手法も考えられるようになった。おまけに情報のやりとりにかかるコストはほとんどゼロになった。 これでも以前と同じような物々交換の市場に毛が生えたような市場とおなじ理論が通用するのだろうか? (完全競争市場という意味では、インターネット上の市場の方が近いかもしれないけど) 僕たちはこの市場とそのプレイヤーの進化をどう考えればいいのだろうか? 普通の経済学では、市場で扱われる商品は単一だし、消費者も生産者も均一だと考えている。 そして需要と供給の調整は価格と数量を通じて瞬時に行われる(=均衡が達成される)と仮定する。 だが、実際にはこの調整には時間がかかるし、均衡が実現するまでに市場の前提条件が変化する可能性だってある。(不均衡動学という分野が実はある) おそらく、現代の競争環境はまさにそうなのだろうと思う。 たとえば携帯音楽プレーヤーの市場。 iPodの優位はなかなか崩れないが、これに本来なら拮抗するような魅力を持ったブランドや製品が立ち向かってきている。 しかしそのたびに、アップルは市場の仕組み自体を変えて対応する。 超軽量プレーヤーがそれであるし、iTunesという楽曲を大量に取り込める音楽管理システム、iTunesミュージックストアというiPodとセットになった音楽配信システム、次には携帯電話とプレーヤーが一体となったiPhoneである。 この間には、著作権保護システムの緩和策もあるし、独自の音楽フォーマットも含まれる。 アップルはさまざまな形で市場のルールを変えてきた。 こういうルールが変わる市場において、経済学は何が言えるのだろうか? ルールを変えるプレーヤーはずるいと言うのだろうか? ルールが変わればそれはもはや別の市場だから、先ほどまでの分析は適用できないから、一から考え直し、というのだろうか? 市場のルールや、消費者の在り方、生産者の生産体制などがめまぐるしく変わる現代で、経済学はどの様な役割を果たせるのだろうか? なんだか悩ましいテーマなのだが、世界にはちらほらとこういう課題に取り組んでいる経済学者もいるようだ。 少し意識的に追いかけていこうと思うので、ここでも情報発信できればと思う。 僕自身のばあいは、どういう競争環境になっても、経済がどういう状態になっても、「社会には守るべき価値がある」と考えていて、その価値をどう守るかを考えるかというのも経済学の役割なのかなと思うようになっている。 個人的には、しばらく、この方向で研究をしていくつもりだ。 興味がある方は、直接アクセスしてもらいたい。