温暖化を劇的に進行させる気候の仕組み

なんとも恐ろしい本を読んでしまった。 『「エコ罪びと」の告白』という本で有名なフレッド・ピアスがまとめた『地球最後の世代』(NHK出版、2009年)を読んで最初に感じたことだ。 温暖化に関しては、いろんな議論があるが、少なくとも地球の気候システムには、温暖化を爆発的に進行させる(場合によっては緩和する)エンジンのような仕組みがあるらしい。 それは、海洋の大循環、モンスーンやエルニーニョといった熱帯地域から熱が運ばれる仕組み、そして成層圏における熱交換である。 これらは温暖化がある程度進行すると、一気にその姿を現すが、さらにその前段階で温暖化を加速させる仕組みもある。 それは、シベリアの泥炭層が暖まることによって発生する膨大なメタン、アマゾンが乾燥することで起こる木々からの二酸化炭素放出、そして、海底に沈むメタンハイドレードの大規模な崩壊だ。 こういう本を読むと、地球の行く先にはもう未来がないのかな?と思ってしまうが、一番感じたのは、関係する科学者で「諦めている人はいないように見える」という事実だ。 厳しい現実を知りながらも、何とかしようと努力している人たちがいる。 その、精神力をこの本を読みながら、感じてもらいたい。 本書は、温暖化に関する科学的知見のうち、温暖化を進行させる側の情報を集めた本だ。 (とはいえ、僕には温暖化懐疑説でまともなものはあまり見たことがない。 せいぜいが、研究の不備を突いて、「その主張には意味がない」と否定をする主張ぐらいだ。 まあ、それでも自分で論文を読んで、その不備を突くのは大切なことだ。それに対して、自分で原著にあたって分析を追わずに批判する人のなんと多いことか・・・) それはさておき、この本は、ルポのような体裁をとっているために、ものすごく読みやすくなっている。 数字がたくさんあるが、それはちょっとおいて、理屈の流れを追うようにすれば、思ったよりも簡単だと思う。 どうせ数字は、「今まで考えているよりも影響が大きい」という程度にとっておいた方がいい。 こういうものは、分析が進むにつれて影響が変化するもので、大切なのは、どういうメカニズムがそこにはたらくのか、ということだ。 ちなみに、この本は訳もすごくいい。 すらすらと引っかかるところがなくて、すんなりと頭に入ってくる。 温暖化のことを知りたいと思う人には、お薦めの一冊だ。 これを読んだ次に読む一冊は、温暖化対策の技術的可能性について書かれているものがいいかもしれない。 なにかいいものがないかなあ・・・