なぜ環境活動の団体は大きくなれないのか

社会起業家の草分けのような存在であるポール・ホーケンの『祝福を受けた不安-サステナビリティ革命の可能性 』を読むと、表題の問いは、問いそのものが不適切というか、不必要なもののように思えてくる。 この本、ペーパーバック版が出たときに、英語で読んだのだが、そこまで感銘を受けなかった。それでも、日本版の帯に「100年後の人類に残したい希望のメッセージ」と書かれていることもあり、英語力のせいで十分読めていないのかもと思い、日本語版を買った。 そして一読して、「やっぱり分からん」という感想。 それでもなにか参考になることはないかなと思ってまた読んでみたら、ずいぶん分かってきた。 確かにこの本は二つの意味で重要な本だ。 それも、環境に関わる人にまずすすめられるだけの一冊だ。 1.環境問題に関心を持つ人が、問題の背景から最先端まで一気に知ることができる 前半は環境運動や環境思想を、ふんだんに事例を交えながら、概観する。 ここを読めば、多岐にわたる環境問題の根っことして、レイチェル・カーソンやラルフ・エマソンの重要性が分かる。 また、なぜ多くの人が環境運動に関わろうとしたのか、最初の自然破壊や公害といった時代からの流れがうまくまとまっている。 2.これからの方向性を与えてくれる 1だけなら他にも良書はあると思うが、7、8章は、自ら環境活動を牽引し、社会企業を作ってきた経験があってはじめて書ける部分だと思う。

世の中には二つのゲームがある。一つは有限ゲーム、一つは無限ゲーム。そして僕らは無限(繰り返し)ゲームの世界に生きている。無限ゲームの例は、家族、祈り、読み聞かせなどである。 無限ゲームは、得たものを未来へ送り込み、未来を満たそうとする。(p.345を要約)

こんな記述は、じっくり読めば読むほど意味が伝わってきて、なるほどなあと感じられる。 最近僕は、環境問題と取り組むには(お金には限らない)「投資」の発想が大切だと語る。 未来をつくるために今できることすることが投資だという意味だ。 無限ゲームの話はその未来の先も見越した話だ。 英語版の教科書には多いが、この本も事例やたとえ話が豊富で、説明が懇切ていねいだ。 その分、ある程度この分野に知識を持つ人には冗長に感じられるし、初学者には、どこが重要かわかりにくい。 僕自身、最初ピンと来なかったのは、単に事例を羅列しただけの本なのかなと思ったからだ。 そして、環境団体は世界で数多く生まれており、それは同時並行的に世の中を変えていこうとしているというメッセージを読んで、もうこれだけ知ればじゅうぶんという気になってしまったのも事実だ。 けれども、全体像が見えてくると、事例の一つ一つもまた違う見え方をして、大事なものに見えてくる。 何度かじっくり読むか、ゼミでみんなで読むことをおすすめしたい。