退学者に対して大学教員になにができるのか

近畿大学産業理工学部に赴任して半年が過ぎました。 この学部は、福岡にあり、一学部一キャンパスの恵まれた環境にあります。 就職率もほぼ90%と、非常に高くて、けっこうおすすめの大学です。 おすすめの理由は、やはりこの就職率とも関係していて、学生と教員の距離が近くて、いい教育ができているんだと思います。 一方で、今課題とされているのが退学率。 ちょっと数字が分からないんですが、本部よりも少し高いんだそうです。 (3月になれば、分かると思います。それか誰かにきけばいいのかも) 事務サイドからは、退学予備軍の学生に対して、教員が話をする機会を設けるべきだという声が聞こえます。 でも、僕はこれは違うと思う。 うちみたいに教員と学生の距離が近い大学は、大学に熱意を持てない学生にとっては、少々暑苦しいのではないかな。 そっとしておいてほしいのに、教員に呼び出されて、応援されるのがしんどい。 じゃあもっと、話を聞くことに徹しては?と言われるかもしれないが、それは本当に教員の仕事なんでしょうか。 悩む学生たちは、自分の進路を一生懸命考えています。 学生の出す答えは、退学も含めてさまざまです。 教員としては、その学生が出す結論を承認してあげたいし、学生の進路を、たとえそれがどんな者であっても祝福してあげたいものです。 それでも、僕らが進路に悩む学生、特に大学への熱意を失いかけた学生を引き止めるような役割ができるかというと、やっぱりできないです。 僕らの多くは、研究の道を志して歩んできて、研究職を手にした人間です。 悩みながらも自分の道を見つけてきています。 その悩んだことを話すことはできるかもしれません。 でも、今目の前で悩んでいる学生を前にして、学生の話を聞いてあげられるかというと、それは、非常に難しいです。 学生の側も、大学に引き止める存在、離れたいはずの大学の人間という目で教員を見ます。 そんな関係で、うまく話し合いができるとは期待しにくいです。 もう一点、相手の話を聞くことは、大変なことです。 どの教員でも、きちんと学生の悩みを聞いてあげられるとは到底思えません。 (研究時間も欲しいし) それよりも、学生が悩みを話せる人に出会える場を提供できれば救われる学生も多いと思います。 (ただ、保健室にいたりする心療内科系のカウンセラーとはちょっと違います) 最後にもう一つだけ。 僕は学生が退学することは悪いことだとは思いません。 入学した学生が退学するのは、せっかく入った大学だけれど、そこには自分の求めることがないことが分かった訳です。 それで、やめるという大きな決断を下しています。 そういう悩みは、必ず、学生の人生にとってプラスになります。 悩まずに、「のんびり大学生活を過ごし、気づいたら就活シーズンも終わってしまい、就職が決まらない学生」が多い方が課題だと思います。 うちも、その辺のところをもっとアピールすればよいのにと思います。